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二児の父、起業してみて分かったこと

人を雇うか雇わないか?〜ひとり起業を始めて思うこと〜

ひとり起業を始めて思うことがある。

 

人を雇うか?

雇わないか?

 

それは忙しくて猫の手も借りたい時であったり、ビジネスを拡大したいと思う時であったり・・・

 

そんなモヤモヤを抱えつつ起業2年目も終わりに近づいた頃、ある人物との出会いが結果として自分とビジネスの関わり方を決定付けてくれた。f:id:akira-wakasugi:20170719094503j:image

ショムニの彼女

その女性は取引先の担当者だった。

彼女はぼくの持ち込む無理難題をいつも快く引き受けてくれる心強い存在で、業界内では特に親しくさせてもらっていた。

 

仮名:千春さんは、業界歴も長く人脈も豊富で、キリッとしたOL風の出で立ちで長い黒髪をなびかせ颯爽と歩く姿はTVドラム「ショムニ」の江角マキコさんの様であった。

 

そんなある日、千春さんの会社に伺った時のこと。

 

「実はここを辞めようと思っているの」

 

ぼくは突然の話に驚いた。

詳しい話しを聞くと、社内の人間関係が原因であるということが分かった。

 

「転職をしようか独立をしようか悩んでいて・・・」

 

ぼくにその答えは分からなかったが、つい2年程前まで同じように悩み独立へ舵を切った自分の経験と体験を有りのままに話したことはよく覚えている。

 

「わたしも若杉社長みたいに出来たらいいのに」

 

ぼくは、ふと思った!

この人となら一緒に仕事が出来るのではないか。

 

「千春さん、よかったら一緒に働きませんか」

 

思考より先に口走っていたような・・・

ちゃんと考えたような、直感的であったような・・・

ただ、これから会社を成長させていくためには、千春さんのような経験のあるパートナーが欲しかったのだ。

 

チームを組むということ

突然の提案に彼女も少し戸惑っていた。

それはどのような働き方になるのか?

報酬はどのようになるのか?

生活はしていけるのか?

 

彼女は今の会社で10年以上も働いていたが、雇用形態はパート扱いで給与は月に20万円前後。

これから大学に通う子供が2人いて、夫と共働きだがしっかり稼がなくてはならないという状況だった。

 

不安なのも無理はない。

ぼくは、今のぼくが出来る最大の提案を丁寧に彼女に伝えた。

 

会社として固定給を払う体力はなかったので、彼女とは業務委託契約を結び、個人事業主として出来高払いで働いてもらうことにした。

 

彼女としては固定給が無いというリスクはあるが、もともと独立も視野に入れているような人である。

彼女に付いている顧客も多く、出来高払いでも十分にやっていけると思った。

そして固定給ではない分、報酬の配分を多くすることで、彼女の生活も守れると思ったのだ。

 

そして彼女を迎え入れるということは、彼女の抱えている潜在的な顧客も自社の顧客として迎え入れることを意味する。

 

不動産は相対取引であり、会社に顧客が付くのではなく、人に顧客が付くからである。

だから彼女一人を迎え入れることは、数百人の顧客を迎え入れるのと同じだった。

 

もしもその数百人に対して自分で営業をして良好な関係を作ろうと思えば相当な時間と労力を要する。しかし、その時間と労力は経験のある人とチームを組むことで省略することができるのだ。

 

だから千春さんとチームを組むことで、会社の成長を一気に加速させることが出来ると思ったのだ。

 

そして数日後、彼女から会社を辞めたという連絡がきた。

そのタイミングで千春さんとは正式に業務委託契約を結んだ。

 

こうして新たなパートナーを迎え、起業3年目はスタートしたのだった。

 

効率主義

千春さんとの仕事は上手くいった。

もともと独立を検討するような人は自分で考え判断して行動が出来る。

 

だから会社としてある程度のマニュアルは作ったが、業務の多くは千春さんの判断に任せることにしていた。

自分の能力を上げ目指したい方向性を示し、それを理解してくれて能力と経験のある人と組めばチームの力を「1+1=2」ではなく、「2×2=4」や「3×3=9」にも出来ると思ったのだ。

 

実際それは思った以上に上手くいって、千春さんは会社の成長に大きく貢献してくれた。

 

だから千春さんが持ち込んでくる仕事の一部をぼくが行うことに対しても当初は全く抵抗はなかった。

それは自分で決めた約束事であったし、二人で配分する報酬に見合う働きとして当然だと思っていた。それに彼女の仕事を把握しておきたいという業務を委託する側としての意図もあった。

 

ただ、それぞれに別々の顧客を抱え、別々の場所で仕事を行い、別々の時間帯に仕事をしているわけで、普段の仕事でお互いの顔を合わせることは殆どない。半年以上会わないということもあった。

書類のやりとりも郵送で出来て、連絡の大部分はメールか電話で事足りてしまう。

 

それはお互いの時間を尊重するための働き方のはずであった。

 

しかし、顔を合わせていない間にお互い成長もするし変化もする。

彼女が以前の会社に勤めていた時は、仕事をするために会う必要があった。

それが一緒に仕事をするようになってから、仕事をするために会う必要はなくなった。

 

仕事を効率化して、お互いの時間を尊重するはずの働き方が、良くも悪くもお互いを不干渉にさせ、心の距離まで遠ざけてしまったのだ。

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ただ変わっていくということ

そもそもぼくが起業した目的は「自分の時間を取り戻すため」だった。

だからぼくにとって不動産の仕事は仕組み作りであり、なるべく少ない時間で、なるべく多くの収益を上げられる仕組みを作ることであった。

 

千春さんもそれに同意をしてくれてはいたが、彼女の仕事のスタイルでは将来的に自分の時間を取り戻すことは難しかった。

  

ただそれでも起業3年目にチームを組んだ時はよかった。

ぼくのやっている仕事と彼女のやっている仕事に共通する部分が多かったのだ。

 

だた、その共通する部分は時を重ねるごとに少しずつ少なくなり、次第に千春さんが持ち込んでくる仕事が、ぼくの仕事時間の多くを占めるようになり、ぼくは身勝手にも不満を募らせてしまった。

 

そこには3年前は歓迎していた仕事を、3年後には敬遠している自分がいた。

 

人を雇ってはいけない人

結論を言えば、ぼくは人を雇ってはいけない人だった。

千春さんとは業務委託契約であり雇用契約ではなかったが、やっている仕事は契約形態とは関係なく社員そのものだった。

 

千春さんは本当に会社に尽くし、一生懸命働いてくれた。

ただ、これから会社運営の自動化を目指し仕組み作りをしている自分にとって、その持ち込まれる仕事をこなす時間は、どうしても時間を奪われているという意識が拭えなかった。

 

本当に身勝手な話である。

 

確かにその仕事は目の前の利益にはなるのだが、そればかりに時間を取られていては、自分の目指す状態は作れないと思った。

 

だからお互いの業務を簡略化したり、これから自分が何を目指しているのか彼女に話してみたりもしたが、小さいな会社では代表のぼくがやらなければいけない仕事も多く改善できることは少なかった。

 

自分一人であれば仕事の帳尻合わせやペース配分も自由に出来ることが、あまりにも近い距離間で仕事をする人がいることによって、その人の都合も考慮して仕事をする必要があり、自分のペースで仕事をすることが出来なくなってしまった。

 

そんな身勝手な理由で千春さんとの関係は悪化して、3年ほど一緒に働いてきた彼女と最後はケンカ別れをしてしまった。

 

人を雇うか雇わないか?

ケンカ別れをして1年ほどがたったある日。

見知らぬ会社から1通のハガキが届いた。

 

代表の名前は1年前にケンカ別れをした彼女だった。

無事に会社を立ち上げたという報告であった

 

元気にやっているということが分かり安堵したのと同時に、最後ケンカ別れをしてしまったことを思い出した。

 

彼女の性格からして何か改善を求めればそれに応じてくれただろう。

しかし、断片的に何かが解決したとしても根本的に何かが解決するわけではなかった。だから僕は彼女の小さなミスを理由に業務委託契約の解除を求めて、それに怒った彼女とケンカ別れとなったのだ。

 

当時のぼくにはそうするしかなかった。

今でも冷酷な決断をしたと思っている。

 

ひとり起業をしていると「誰かこの仕事を手伝ってくれたらなぁ」と思うことがある。

しかし、それは特定の誰かでなくても、どこかの会社に外注したり、外部の組織に委託したりすることで改善することができる。

 

誰かを会社に招き入れるということは、その人の人生も招き入れると言うこと。

単なる労働力が欲しければ外注した方がいい。

 

人は機械ではない。

そばで働いている人が落ち込んでいたら心のメンテナンスも必要になる。

良好な関係を作るためには興味のない雑談が必要なこともある。

冷たい言い方になってしまうが、その時間や労力も含めて「人を雇う」ことを検討しなくてはならない。

 

今日のベストは、明日のベストでは無いかもしれない。それが分かっていれば大怪我をすることはない。

 

しかし、自分が大怪我をしなくても相手に大怪我をさせてしまうことがある。

人を雇い入れる者の責任として、それはあってはならない。

 

どうにも前に進めない自分が一歩前に進み、そこで何を思い、どう感じるのか、それは体験してみなければ、いつまで経っても分かることはなかった。

 

その1つがぼくにとって、人を雇うか、雇わないか、ということだった。

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