TIME IS LIFE

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父親になって分かったこと

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パパ、見て!見て!!

 

娘は無邪気な笑顔で僕を呼ぶ。

 

2015年9月。

 

起業して4年半が経ち、やっと家族の時間を味わえるようになった気がする。

 

 

2011年。

 

娘が生まれる年に起業した。

 

妻のお腹の中に赤ちゃんがいると知った時、嬉しい気持ちと同じくらい、危機感のようなものを感じた。

 

『もう時間がない』

 

その頃の僕はサラリーマンで、いつかは独立したいと思ってはいたが、その『いつか』はいつになるか分からなかったし、特にコレといって何をやりたいということもなかった。

 

しかし、自分が父親になると知った時、このままでは『いつか独立したい』という夢を語るだけの人生で終わってしまいそうな気がした。

 

何故なら、きっと生まれてきた赤ちゃんの顔を見たら、嫌な仕事だって我慢してやるだろうし、自分の夢を諦める理由もできる。

 

そうなれば『本当は独立したかった』という夢があったことだけを語り、行動しなかったことを自分にも周りにも正当化して生きていく気がした。

 

だって失敗して、家族に苦労を掛けたくないから。

 

そんなふうにモヤモヤと考えるだけで、なかなか具体的な行動には繋がらなかった。

 

 

しかし、状況は一変する。

 

これまでとは社内方針がガラリと変わり、夜遅くまでのサービス残業が半強制的に課せられるようになった。

 

このままでは家族と過ごす時間も満足に取れない。

 

不満は募るが、もうすぐ子供も生まれる。

このまま勤めておいた方が、なんとなく無難であることは分かっていた。

 

このまま会社から貰える給料と引き換えに、家族と過ごす時間も、自分の夢も、人生の主導権さえも自分の手で握ることが出来ないまま、なんとなくの安定と引き換えに、すべて自分の手から離れていくような気がした。

 

これが家族を持つということで、大人になるということで、なんとなく無難で、安定してそうで、大きな失敗はなさそうだったから。

 

これでいいんだ。

 

そう、自分に言い聞かせようとした。

 

 

でも僕は、それが出来なかった。

 

 

周りの空気に合わせて、今考えても生産性が高いとは思えないサービス残業を受け入れ、家族との時間を犠牲にすること。

 

家族との時間も諦め、自分の夢も諦め、それを自分の中で正当化したまま人生をやり過ごすことは出来なかった。

 

どうせ家族と過ごす時間が持てないのなら、自分の夢に向かい、独立して家族との時間が持てなくなる方がまだマシだ。

 

僕は現状への不満、怒り、危機感が爆発するように思い立ち、起業した。

 

この時、娘が生まれるまで半年を切っていた。

 

 

手元には半年分の運転資金。

 

売上が上がらなければ、半年で僕の挑戦は終わる。

 

借入はしなかった。

 

もしも上手くいかなかったとしても、借金さえなければ、これまでと同じ。

またサラリーマンをやりながら再起を図ればいいと思っていた。

 

そう考えられるようになってから、挑戦するだけなら何度でも出来るのだと思い、気持ちが楽になった。

 

僕に与えられた時間は半年。

 

『絶対にお金を稼ぐ』

 

正直、それしか考えていなかった。

 

お金を稼がなければ、家族に苦労を掛ける。そしてまたサラリーマンをやらなければいけない。

 

それは避けたい。

 

そのためには、お金を稼ぐしかない。

 

家族と自分の夢を守るため、僕は我武者羅に働いた。

 

だから僕の起業には、社会的なビジョンも志しもない。

 

あったのは、自分の家族を守りたいという気持ちと、せっかく始めた会社を潰したく無いという思いだけだった。

 

愛する者と自由な人生を生きたい。

 

ただそれだけだった。

 

 

 

そんなふうに走り続けてきて4年半が経った。

 

近頃は家族の成長に、ハッとさせられる。

 

自分がパパでいられる『期間』はあとどのくらいあるのだろうか。

 

もちろん娘は、いつまでも娘で、僕はいつまでも父親なのだが、一緒に戯れて遊んだり、手を繋いで出掛けられる期間はあとどのくらいあるのだろうか。

 

 

子供の成長は早い。

 

 

自由に生きるための手段として選んだ起業という選択。

 

会社の成長ばかりに目を奪われ、我が子の成長を随分と見逃してしまった。

 

これから僕がパパとして過ごせる残り時間と、これまで過ぎてしまった時間を思うと、とにかく今を大切にしたいと胸が熱くなる。

 

何気無い、いつもの日常が、心から愛しく思える。

 

独立して家族を守るために一生懸命やってきたつもりだったけど、いつも守られていたのは僕の方だった。

 

自分一人だったら、たくさん諦めていたと思う。

 

家族の存在が自分を奮い立たせ、自分の夢を守ることに繋がった。

 

だから娘には、好きなことをして生きる父親の背中をたくさん見せたいと思う。

 

僕の父親がそうであったように、好きなことをして、幸せに生きる親の背中を見せることが、子供への最高の贈り物だと思うから。

 

 

幼い頃の記憶が蘇る。

 

楽しそうに生きる大人の姿を見た。

 

早く大人になって遊びたいと思った。

 

だって大人はいつも楽しそうだから。

 

 

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