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個展会場の予約をしてしまった。
2016年5月。
2ヶ月後に個展をやることに決めた。
誰に言われたわけでも、勧められたわけでもない。
いつかやってみたいと思っていたことを、今から実行に移し始めただけ。
約1年前、iPhoneを片手に撮り始めた写真たち。
写真学校に通ったわけでも、誰に教わったわけでもない。
ただ楽しみながら自分の心が動いた瞬間を切り撮ってきた。
その感覚をInstagramやFacebookに投稿してみんなと分かち合えることも嬉しかった。
そしていつかはネットの世界だけではなく、リアルな世界でも個展や写真展などを開催したいと思うようになっていた。
しかし、さすがに写真を撮り始めてまだ1年。
独学でInstagramやFacebookに投稿しているだけ、個展をやるには時期不相応だと思っていたし、誰にでも出来るものではないと決めつけていた。
だから個展や写真展をやりたいなんて、口にはしなかったし、それはいつか叶えたい夢のような存在だった。
しかし、それは完全に自分の思い込みだった。
そもそも個展とは、どんな流れで開催されるのだろうか。
個展開催がいつか叶えたい夢だとしても、そこに至る道筋くらいは知っておこうと思い、個展・開催・方法、とキーボードを叩いた。
唖然。
驚くことに多くの個展会場は誰でも簡単に利用することができたのだ。
つまり誰でも場所代を払いギャラリーなどを借りれば個展を開催することが出来る。
これまでは、なんとなく誰かから声が掛かって個展は開催されるものだと思い込んでいた。
例え自費開催するにしても、ある程度の経験がある作家でないとギャラリー側に受け入れてもらえないと思っていた。
どれも完全に自分の思い込み。
自分の思い込みで目の前にある可能性を潰していただけだった。
その世界にいる人にとっては当たり前のことなのかもしれないが、これまで畑違いの世界で生きてきた自分にとっては、その当たり前は新鮮で目の前にある可能性を大いに広げていくものとなった。
「いつかやりたい」と思っていたことが「今から始められる」のなら、やらない理由はない。
もちろん色々考えてみた。
いつかやりたいと思っていた個展を、今から始めたことにより、何か失うものはあるのだろうか。
もしも、失うものがあるとしたら、個展開催費用の数万円だけなのではないだろうか。
それ以外は、どんなことも全て経験として自分に蓄積されていく。
もちろんお金を失うかもしれないのは嫌だけれど、そのお金は未来の自分への投資。
いつか経験してみたかったことを、今から始めるために必要なお金は、将来の経験を先取りする自己投資なのだ。
経験を先取りすることで、今から将来に向けて課題を見つけ、修正して早い段階でレベルアップしていくことができる。
時間の濃度を高め、先取りした経験は、限りある人生をより豊かな方向へ導いてくれる。
そしてなにより、自分がどれだけできるのかやってみたかった。
たとえ上手くいかなかったとしても、死ぬこともなければ、人生の窮地に追い込まれることもない。
だったら、やらない理由はないのだ。
そして個展開催までの2ヶ月間は本当に充実した濃厚な時間となった。
予想はしていたけど予想以上。
写真を印刷してパネルにするような技術的なことから、個展会場をどのように演出するかというエンタメ的な要素まで、自分にとっては初めて経験することばかりだった。
その試行錯誤の連続、考え実践していくプロセスそのものが楽しかった。
2016年7月に開催した初の個展は、自分にとって生涯忘れられない時間となった。
自分がこれまで手掛けた、どんなプロジェクトよりも充実した心ある時間だった。
もちろん写真家としての技術や売上がどうとかいう話ではない。
ただ自分の表現した世界を通して、それに共感してくれる人と共に過ごす時間に心が満たされた。
ぼくは「いつかやりたい」と思っていたことを「今から始めた」ことにより、いつか訪れる未来の経験を先取りすることができたのだ。
もしもまだ、個展開催は「いつか」の夢のままでいたら、この経験はいつできたのか分からない。
5年後かも、10年後かも、いつかの夢のままかもしれない。
いつか叶えたい夢を今から始めてみるとどうなるのだろうか。
意外に満足して、その夢はここで成就し、消え去ってしまうかもしれない。
夢は夢のままであるから美しく、その夢を追い続けるからこそ日々前進していけるのかもしれない。
しかし、いつか叶えたい夢があるのなら、それは今からでも始めることができる。
全てを今すぐに叶えることは出来ないが、その一部を叶えたり、疑似体験をすることは出来る。
その先取りした経験から、また新しい発想が生まれる。
そのまま夢に突き進むこと出来るし、軌道修正することも出来る。
人間、経験してみないことには、何かを本当に心から理解することは難しい。
頭で分かっているのと、心に刻まれ体で理解しているのとでは、後の行動に必ず差が出る。
その先取りした経験により、失うものがあるとしても、自分の人生を窮地に追い込むものでないのなら、今すぐ夢の実践に向けて歩き出してみるのも悪くない。
たとえその夢が道半ばで終わる日が来ようとも、歩いて来た道のりが心ある日常であったのならば、それは夢が叶うことよりも愛しいことだと思う。
夢は叶えれば終わってしまうが、夢を叶えるために心ある日常を歩んでいくプロセスは、夢を叶えても続けていくことができる。
もちろん1つの夢が叶えば、その続きはまた見えてくるものだが、道半ば夢の先を今は見ることはできない。
だから、今見える夢に向かい心ある日常を刻んでいく。
いつか叶えたい夢を「今から始める」ということは、心ある暮らしの選択肢なのかもしれない。
夢を先取りしてみて分かったこと
・自分の思い込みで目の前にある可能性を潰していることもある。夢を叶えるために一歩を踏み出すと、これまでとは違う世界に触れ始め、目の前には新たな可能性が広がっていく。
・夢を先取りすることで経験を積み、将来に向けて課題を見つけ修正して、早い段階でレベルアップしていくことができる。その経験から新しい発想が生まれ、そのまま夢に突き進むことできるし、軌道修正することもできる。
・夢を先取りしたことにより、失うものがあったとしても、人生を窮地に追い込むことは少ない。
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