2011年春、ぼくは会社を辞めて起業した。
その目的はただ1つ。
『自分の身を解放して自由な時間を手に入れる』ことだけだった。
当時、その先に何があるのかは分からなかったが、まずは行けるところまで行ってみようと思いがむしゃらに走り出した。もちろん起業して自由な時間を手に入れるためには、ある程度のお金を稼がなければいけない。そのお金を稼ぐためには、自分の提供する仕事が社会に受け入れられるものでなければいけなかった。
だから社会が必要としている仕事を選び、それを提供しながら自分の時間も増やしていく、そんなことを考えていた。
それは既に需要のあるマーケットを見極め、仕事の生産性を突き詰めていく道のりとなった。
マーケットを見極める
自分の身近なところで
困っている人はいないだろうか?
自分の身を解放するための仕事選びで最も重要なことは・・・
「マーケットを間違ってはいけない」ということ。
どんなに価値ある仕事を提供できたとしても、需要1人のところに100人の事業者が仕事を提供していたら自分が選ばれる可能性は低い。そんな競争の激しいマーケットに参入することは、「自分の身を解放する」という目的には相応わしくない。
では、どんなマーケットに参入すれば良いのだろうか?
それは「自分の身近で、困っている人が複数いるような、ニッチな分野」が望ましいと言える。なぜなら、困っている人が複数いるということは、そこには需要があるということ。自分の身近で複数いるのなら、社会全体に目を向ければ、その数は極小起業家のマーケットとしては十分なのだ。
そして自分の身近でよく知っている分野なら、仕事として取り組みやすい。それは今の仕事に関係のあることかもしれないし、もしかしたら趣味に関係のあることかもしれない。どちらにしても何も知らない分野をゼロから開拓するより、既に知っている分野で商売をする方が勝算はあるだろう。
さらに、そのよく知っている分野の中でも特にニッチな部分に焦点を当てるといい。ニッチな部分というのは大手企業が参入しても採算が合わず放置されていることが多い。そこで極小起業家は身近でニッチな分野を見つけ、その需要を満たせるビジネスモデルを作り提供していけばいいのだ。
ぼくの場合、そのニッチな仕事は医療機関からの退院支援であった。
長期入院で自宅を持たない患者さんが退院する際の家探しを手伝うのだ。
医療機関から物件までの送迎、医療機関内での契約締結など入院しながらでも快適に家探しができるサービスを提供している。つまり患者さんが入院しながら外出許可を取り、病み上がりの身体で、あちらこちら歩きまわり物件を探す手間のかかる問題を解決しているのだ。それは患者さんにとってはもちろん便利なサービスであるが、その患者さんと一緒に家を探す医療機関のソーシャルワーカーさんにとっても付き添いの手間や時間を軽減できる便利なサービスとなっている。
ニッチな分野で他にはない便利なサービスを提供していれば口コミが広まる。
口コミでお客さんが来てくれれば、集客にお金をかけなくていい。
その結果、低コストでの事業運営が可能となる。
極小起業家はニッチな分野に特化することで、強みである小回りの良さを最大限に発揮することができる。それは特に大手企業では採算が合わずに参入できないマーケットで存分に発揮することができるのだ。
仕事の生産性を上げる
労働時間を減らし
大切な仕事に的を絞り
自分の時間を増やしていく
極小起業家はニッチな分野に特化することで存在感を発揮する。
だからニッチな分野を見つけ、価値ある仕事を提供していくことでお金を稼ぐことはできる。
しかし、自分の身を解放するという目的の達成には、まだ程遠い状態である。
ただ、最終的な目的は 『自分の身を解放して自由な時間を手に入れる』ことだとしても、オセロのように一気に白と黒をひっくり返すことはできない。だから今できることから少しずつ行動していく。
ぼくは起業して3年ほど経ってから、週6日・7日働いていた労働時間を少しずつ減らしていった。具体的には不定休だった会社を土日休みにして、土日はコールセンターに電話を転送することもやめた。そして少しずつ土日以外の労働時間も減らしていった。
そうすると実質労働時間はどんどん減ってしまうので、右肩上がりの経営を続けていくためには生産性を上げるしかない。少ない時間でより多くを稼ぎ出すのだ。この労働時間を減らしたことで、常に最も大切な仕事に特化せざるを得ない状況が生まれた。
しかし、それは同時に大切な仕事以外は切り捨てることを意味していた。大切な仕事を選ぶことは難しくはなかったが、これまでやっていたそれ以外の仕事を切り捨てることは精神的に辛かった。辛かったが惰性でこれ以上続けていても、自分の目的からは遠のいてしまうだけだと思い、心に蓋をして切り捨ててきた。
極小起業家とはいえ、一人で仕事をしているわけではない。
多くの人が関わって一つの仕事は成り立っている。
だから自分が何か仕事をやめると困る人もいる。
しかし、自分の人生は自分で決めたい。
だから、惰性で続けている仕事があるとしたら思い切ってやめる。
その仕事をやめた余白は新たに自分の時間となる。
労働時間を減らし、自分にとって大切な仕事に的を絞ることで、自分の身は確実に解放されていく。それは労働時間を減らして収入も減らすという意味ではない。労働時間を減らして収入は上げるのだ。より少ない時間で、より多くを稼ぐ。その源泉となる仕事を見極め、限られた時間で集中して完了させていく。
例えば、これまで1日かかっていた仕事は午前で完了させる。そして翌日の仕事を午後に完了させることが出来れば成果は2倍となる。
そうやって仕事の生産性を上げていくことは『自分の身を解放する』という目的に確実に近づいていく。
仕事を自動化する
自分以外の何かに
働いてもらう仕組みを作る
自分の身を解放して自由な時間を手に入れる。
すべてはその目的から逆算して仕事選びから仕事スタイルまでを決めてきた。
自分の身近でニッチな分野に特化してサービスを提供する。そして事業が十分軌道に乗ってきたら労働時間を減らし、仕事の生産性を高めることに集中する。この段階で自分の時間を好きにコントロールすることはできる。
しかし、目的にはあと一歩足りない。
目的はあくまでも、『自分の身を解放して自由な時間を手に入れる』こと。
世捨て人になるわけでもなく、俗世界を生きる社会人として自分の身を解放していく。
そのためには仕事を自動化する必要がある。
少し余談になるが、ぼくは起業前に小さな会社を複数渡り歩き勤めてきた。
その経験上、小さな会社は人を雇っても経営者が自分の身を解放することはできないと思えた。人手が増えればたくさん稼ぐことはできるかもしれないが、結局は人の数だけ管理をすることも増えて、小さな会社の経営者はいつも忙しそうであった。
だから、ぼくは仕事を自動化するために人を雇うことはしなかった。
人を雇う代わりに、事業で稼いだお金を貯めて、お金を生み出す小さな不動産を少しずつ買い増していったのだ。
俗に言う不動産投資である。
事業で稼いだお金で人を雇うのではなく、そのお金で収益を生む不動産を買い続けたのだ。それは既存事業の完全な自動化とは言えないが、自分以外の不動産という働き手を少しずつ増やすことで労働時間は徐々に減り、自分の身は確実に解放されていった。
不動産投資に関しては関連書籍や情報商材がたくさんあるので、あえてここで述べることはしない。ただ簡単に言えば、割安な不動産を見つけて購入して人に貸し出す仕事である。その仕組みを作るのは単純作業の連続であるが、ぼくにとってはお宝不動産を見つける作業が楽しくてたまらない。
ぼくの場合、仕事を自動化する仕組み作りは不動産を買うことであった。しかし、人を雇うことに抵抗がない人は人を雇うことが仕組み作りになるし、既存事業を細分化して外注ポートフォリオを作り、自分を事業の仕組みから外すことで仕事を自動化することもできる。
やり方は人それぞれでいい。
重要なことは自分以外の何かに働いてもらうこと。
自分の時間が増えていく仕組みを作ることなのだ。
そんな仕組み作りを始めてから、自分の時間は確実に増えていった。
時々、もし起業前に不動産を持って独立していれば、こんなに苦労をすることもなかったのだろうと思うのだが、後の祭りである。
しかし、結果的には全くのゼロからお金を稼ぎ出し、仕事の生産性を高め自分の時間を作り出し、自分の身を解放することができた経験は、ぼくにとってかけがえのない宝物なのだ。
自分の身を解放する『3ステップの仕事術』
忘れてはいけない大切なこと
何のために目的を達成したいのか?
目標
『自分の身を解放して自由な時間を手に入れる』
1ステップ
大手企業がライバルにならない分野で、既に需要のあるマーケットを見極めてから参入して堅実に稼ぐ。自分の身近で困っている人が複数いるようなニッチな分野が狙い目。
2ステップ
収益を右肩上がりに伸ばしつつ自分の時間を手に入れるためには、仕事の生産性を上げる必要がある。労働時間を減らして自分にとって大切な仕事に的を絞ることが効果的。
3ステップ
自分以外の何かに働いてもらう仕組みを作り、仕事を自動化していく。事業で稼いだお金でさらにお金を稼ぐのが目的ではなく、自分の身を解放する仕組み作りに投資する。
自分の身を解放する『3ステップの仕事術』は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ただ、この3ステップはあくまでも『自分の身を解放して自由な時間を手に入れる』だけに止どまります。その身が自由になっても、それを自由だと感じられる心がなければ、毎日が手持ちぶさたとなり、やっとの思いで手に入れた自由な時間も虚しいだけの時間に変わっていきます。
目的を持つことは大切だと思いますが、自分はなぜ自由な時間を得たいのか、その時間を使って何をしたいのか?
目的に向かう動機は何だったのか?
ぼく自身、それを突き詰めて考えることが出来れば、もっと近道はあったのだと思います。そんな掴みかけた自由について書いた記事がありますので、ご興味のある方は見ていただけたら幸いです。
※WEBマガジンORDINARY掲載記事☆
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