- はじめに -満員電車に乗りたい人はいない-
- 1.密による感染リスク
- 2.ストレスによる健康リスク
- 3.犯罪に巻き込まれるリスク
- 4.疲れによる経済的リスク
- 5.幸福度の低下リスク
- おわりに -「乗らない」と決めることから-
はじめに -満員電車に乗りたい人はいない-
みんな我慢して乗っている満員電車。
仕事や通学のためにしかたなく乗っている人がほとんどでしょう。
私も以前は満員電車に乗っていました。
でも、満員電車は「乗らない」と決めれば避けることができます。
そこで満員電車に乗ることで生じるリスク(予想される危険)を指摘することにより、これから満員電車に「乗るか、乗らないか」を考える材料にしていただければと思います。
1.密による感染リスク
満員電車で新型コロナに感染することはないのでしょうか?
個人的には心配です。
マサチューセッツ工科大学のジェフリー・ハリス教授は、「ニューヨークでの感染拡大は地下鉄が大きな要因だった」という研究結果を報告しています(下記参照:YouTube音あり)。
日本の電車は窓を開けて走ってるから大丈夫と考える人もいるでしょう。たしかに、閉まっているいるよりは安心です。
しかし、理化学研究所の調査によると「時速80キロの電車が窓を開けて走行した場合でも、通勤ラッシュ時のような満員の状態だと、空気の流れが止まり、十分な換気ができないこともわかった」と発表しています。
いまのところ「満員電車で感染した」という報告はありませんが、今年4月時点のデータを見てみると感染者の約半数が「感染経路不明」となっています。
とくに30代から50代で感染経路がうかがえない傾向が顕著になっていますので、仕事の行き帰りで密になる満員電車で「感染していない」とは言い切れないでしょう(下記参照)。
2.ストレスによる健康リスク
国土交通省が発表した「交通の健康学的影響に関する研究I」によると、
通勤ストレスは混雑度合いが激しくなるほど増加する
通勤ストレスは総乗車時間が長くなるほど増加する
としています。
混めば混むほど、乗れば乗るほど、ストレスが溜まるという話ですね。当たり前といえば当たり前なのですが、やはり私たちは満員電車に乗ることでストレスを溜めているようです。
さらに強烈な研究結果も出ています。イギリスの心理学者デイヴィッド・ルイス博士は「通勤ラッシュによるストレスは戦場以上」という研究結果を報告しています。
個人的には戦場よりはマシなのでは…と思いますが、満員電車に乗ることで私たちが強いストレスを感じていることには違いありません。このストレスが健康に良くないのです。
ストレスを感じると脳内ではコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールの分泌が慢性的に増加すると、うつ病、不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患につながることが多くなるとわかっています(下記参照)。
もちろん、ストレスが健康に良くないということは皆知っています。
言われなくてもわかっているという人がほとんどでしょう。
それでも満員電車のドアを前にして、
「自分の健康と引き換えに、乗る価値はあるのか」
と考えることも必要ではないでしょうか。
3.犯罪に巻き込まれるリスク
電車でトラブルに巻き込まれたことはありますか?
私はあります。幸い大きなトラブルにはなりませんでしたが、難癖をつけられたり、舌打ちをされると朝から嫌な気分になります。
日本法規情報が電車トラブルに関するアンケート調査を行なったところ、「3人に1人が電車トラブルに巻き込まれたことがある」と回答しています。
いっときの嫌な気分だけで済めば幸いですが、ささいなトラブルから手が出てしまえば、誰もが被害者や加害者になりかねません。
さらに警視庁のデータをもとに東洋経済では、「都内「痴漢被害」7割が電車や駅で起きている 」という記事を掲載しています。
完全に親目線の話になってしまい恐縮ですが、私は娘たちが電車通学をするようになったら「絶対に満員電車には乗るな」と言うつもりです。
満員電車に乗らないだけで、犯罪やトラブルに巻き込まれるリスクを下げることができるからです(下記参照:3人に1人が巻き込まれたトラブルの内容)。
電車トラブルに巻き込まれた経験がある人が3人に1人。あなたの乗っている電車でも起こっているかも!? | 相談サポート通信|日本法規情報株式会社
4.疲れによる経済的リスク
満員電車による経済損失は年間3240億円だそうです。
ナビタイムジャパンの調査によると、その内訳は遅延、肉体的・精神的ストレス、身動きが取れないことによる生産活動の制限、その他満員電車の影響による社会的損失とされています(下記参照)。
ただ、3240億円の経済損失といわれてもピンッときませんよね。満員電車に乗ったからといって給料を減額されるわけでも、罰金を取られるわけでもありませんから。自分には関係ない、損はしていない、と考える人もいるでしょう。
でも本当にそうでしょうか?
朝から満員電車に乗って身動きの取れない状態で、肉体的・精神的にも疲れて仕事をはじめる自分と、疲れていない自分。仕事で成果を上げられるのはどちらでしょうか?
私は疲れていないとき、肉体的にも精神的にも疲れていない方が成果を上げやすいと思います。仕事で成果を上げる人は収入も上がりやすい。逆に、朝から疲れていると自分本来のパフォーマンスを発揮できません。つまり、本来のパフォーマンスを発揮すれば得られる収入の取りこぼしが発生しているのです。
もちろん業種や職種、職場によっては「成果を上げても上げなくても収入は変わらない」という人もいるでしょう。たしかに、今いる職場ではそうかもしれません。
それが会社の決まりなのか、雇用契約上の問題なのかはわかりませんが、「自分はもっと収入を得る価値がある」と思うのなら、自分の仕事をもっと評価してくれる会社に転職すればいいのです。でも、まだ心からそう思えないのなら、まずは今いる職場で成果を上げることに専念した方がいいでしょう。
自分本来のパフォーマンスを発揮するため、収入の取りこぼしをなくすためにも、満員電車で疲れてしまうのはもったいない。それに満員電車という余計なストレスをなくせば、ストレス発散のために買い物をしたり、憂さ晴らしに飲み会でお金を使うことも減るので経済的です。
5.幸福度の低下リスク
人が幸せか不幸せかを他人が測ることなんてできない。
個人的にはそう思っていますが、世界には「幸福度ランキング」なるものがあります。2020年度の日本の「世界幸福度ランキング」を見ると153カ国中の62位でした。
日本はアメリカと中国につづく世界3位の経済大国ですが、幸福大国ではないのです。
原因の1つに通勤時間の長さがあるといわれています。
幸福度ランキング1位、フィンランドの首都ヘルシンキの平均的な通勤時間が片道26分なのに対して、東京は51分です。ほぼ倍ですね…(下記参照:ヘルシンキはワークライフバランス1位にも選ばれていますが、東京は最下位です)。
こうしたデータに加えて …
●通勤時間が長い人ほど幸福度は低くなる(アメリカ世論調査会社ギャロップ)
●人が1日の中で最も不快に感じるのは通勤時間(スイス人経済学者ブルーノ・フライ)
●夫の通勤時間が45分を超えると離婚率が40%上がる(スウェーデン ウメオ大学)
など、通勤時間と幸福度の因果関係は世界中のさまざまな調査により指摘されています。
通勤時間の長さに加えて、これまで見てきた満員電車に乗ることで生じるリスク。
「密による感染リスク」
「ストレスによる健康リスク」
「犯罪に巻き込まれるリスク」
「疲れによる経済的リスク」
これらのリスクを背負う通勤が、私たちの幸福度を下げる要因になっていると考えられます。
おわりに -「乗らない」と決めることから-
私も長いこと満員電車に乗っていました。
「みんな乗ってるし、あたりまえ」と思っていたんですね。
でも転職して自転車通勤を経験したあと、次の転職先でまた電車通勤になったときは、もう我慢できませんでした。
早起きして6時台の電車に乗るようにしたんです。職場の最寄駅に着いてからは、カフェで読書か資格試験の勉強、もしくは会社に早く行って仕事を片づけるようにしていました。
満員電車は自分が「乗らない」と決めれば避けることができます。
仕事や通学のため嫌々でも乗ることができるのは、「まだ我慢できる」からですよね。「もう我慢できない」となった人は、転職を含めテレワークできる環境をつくったり、会社の近くに引っ越したり、通勤手段を変えたり、混雑しない時間帯に電車を利用など、なんとか満員電車を避ける工夫をしています。
「まだ我慢できる」と満員電車に乗りつづけることができる人は、とても強い人だと思います。でも我慢し続けても、満員電車に乗ることで生じるリスクが減るわけではないのです。
密による感染リスク、ストレスによる健康リスク、犯罪に巻き込まれるリスク、疲れによる経済的リスク、幸福度を下げるリスク。これらは多くの人にとって決して小さくないリスクだと思います。
このようなリスクを背負ってまで満員電車に乗る価値はあるのか?
それぞれ異なる事情はあるかと思いますが、満員電車に「乗るか、乗らないか」を含めてライフスタイルを見直す価値はあるでしょう。